
【戸隠奥社の杜3つの課題】
●杉並木老齢化と危険性
杉並木のスギ樹齢が400年を超えて老齢化し、近年頻発する災害等の影響で倒伏する危険性が高まっています。
●補植の遅れ
江戸期まで実施していた補植等が進んでおらず、世代交代への対応が急務。
●根系の損傷
参道側のスギ根系は踏圧等により大半が枯死している状況。
●腐朽菌感染リスク
参拝者等が杉並木のスギへ接触することで腐朽菌の感染拡大が懸念されている。
●針広混交林の生態系
ニホンジカによる影響:長野県内でニホンジカ等の分布拡大により林床植生消失のリスクが迫りつつある。
光環境の阻害:一部の広葉樹がスギの生育に必要な光環境を阻害している。
戸隠神社奥社社叢は、長野県天然記念物(昭和48年指定)と長野県史跡「戸隠神社信仰遺跡」(昭和54年指定)の重複指定を受けている極めて稀有な文化財です。
随神門より奥社側の範囲では、史跡と天然記念物の指定範囲が完全に一致しており、自然と文化が一体となった複合的価値を持っています。
戸隠奥社の杜の保全は、単なる自然保護や遺跡保存ではなく、信仰空間としての統合的価値の継承を目指しています。
●史跡保存との調整課題
保全計画では、史跡と天然記念物の保存活用において将来的な調整課題を想定しています。
史跡に関する保存活用計画は未策定であり、学術調査も道半ばであることを踏まえ、本計画の運営において史跡と本天然記念物の保存活用に将来、調整を要する事項が生じる可能性を想定しています。
●史跡遺構への影響回避
杉並木の周囲は史跡となっているため、補植に際して土壌を掘ることになるが、史跡を破壊する危険が高いため、補植に際しては、史跡保存に詳しい専門家と協議の上、専門家立会いの下で適切な作業を行います。
●遺構保存と樹木管理の両立
院坊側の慎重な対応:院坊側のスギについては、現状の植栽列を保持して史跡側へ下がることのないように慎重に行う。
参道側の配慮:対岸の講堂川方面のスギについては、参道脇に整備されていた水路遺構を考慮し、現状の植栽列を原則としつつも、参道から少し離れた位置に植栽することが望ましい。
●学術調査の必要性
史跡の学術調査が十分ではなく、本質的価値や構成要素が明らかになっていない状況であり、未解明であるものの、重要な遺構と思われる要素は指定範囲に存在が指摘されているため、継続的な学術調査が必要です。
●参道の維持管理
路面の荒れ:
降雨時の水流で参道は何度も荒れ、砂利等での補修を余儀なくされている。
越水による損傷:
公衆トイレ付近では沢水がU字溝から越水して参道に流れ込み、参道を削っている。
車両通行による影響:
管理用車両の通行や参拝者の通行により、スギ根系の損傷が懸念される。
●施設・設備の不備
トイレ不足:
・奥社参道内の公衆トイレは一つしかないため、参拝者の負担が大きく、繁忙期にはオーバーユースとなっている。
・トイレは汲取り式を採用せざるを得ず、管理用車両の通行増加の一因となっているため、スギ根系への悪影響に繋がる。
電力供給の問題、火気管理の課題:
電気が通っていないため、トイレは汲取り式を採用せざるを得ない。 社務所で使用する発電機用のガソリン・暖房用の灯油・堀こたつ用の木炭の管理が火気取扱い上の安全確保と管理面の負担となっている。
電力供給の問題、照明・防犯設備の不足:
殿内、授与所、ポイント地点等に照明設備がなく、防犯カメラ等も設置されていない。
サイン類の整備不足:
本質的価値を伝える適切なサインや参拝者の安全確保のためのサインが不十分。
“ご支援のお願い”
受け継がれてきた聖域を、次世代へ。
神聖な自然と文化を後世に伝える保全事業。
参拝者・地域・企業が一体となった保全活動を目指していきます。