戸隠奥社の杜保全調査

  1. TOP
  2. 戸隠奥社の杜を知る
  3. 戸隠奥社の杜保全調査

【戸隠奥社の杜で実施されている調査】

これらの調査により、戸隠神社奥社社叢は「どのような状態で森林が維持され、現在の森林に至っているのかを正確に示す資料」が整備された、国内でも類例の少ない貴重な事例となっています。

“毎木調査”

「毎木調査」は森林調査の基本的な手法で、調査対象範囲内のすべての樹木を一本一本調べる調査のことです。

調査内容

樹種の同定:スギ、ミズナラ、ブナ、ウラジロモミなど、木の種類を特定

サイズ測定:胸高直径(地上1.3mの高さでの幹の太さ)、樹高(木の高さ)、枝張り(枝の広がり)

位置記録:GPS座標で正確な位置を記録
健康状態:病気、枯れ、損傷の有無
個体番号付与:一本一本に番号を付けて管理

戸隠での毎木調査の特徴

実施主体:戸隠神社の杜と杉並木を守る会(市民団体)
継続性:定期的に実施して変化を追跡
記録:長野県植物研究会誌に継続発表
範囲:約60haの広大な社叢林全体

なぜ重要?

森林の現状把握:どんな木がどこにどのくらいあるかを正確に記録
変化の追跡:枯死、新規発生、成長を時系列で把握
保全計画の基礎:科学的根拠に基づいた管理s方針の策定
学術的価値:森林生態系の研究における貴重なデータベース

つまり、森林の「戸籍調査」のような、すべての木を記録する詳細な調査です。

“巨樹調査”

  • ● 対象:社叢林内の巨木個体
  • ● 項目:樹高、胸高直径、樹冠幅等の詳細測定
  • ● 記録方法:GPS座標と写真による個体管理
  • ● 継続性:定期的な再測定による生長量把握

“植物相調査”

  • ● 調査範囲:天然記念物指定範囲全域
  • ● 確認種数:101科434種の植物を確認
  • ● 調査会社:株式会社BO-GA
  • ● 特徴:山地帯上部から亜高山帯下部の植生帯を網羅

“樹木の健康診断調査”

音響波診断調査

  • ● 実施年度:平成29年、平成30年
  • ● 実施主体:グリーン巴樹木医事務所
  • ● 技術:音響波による内部腐朽診断
  • ● 対象:杉並木の主要個体
  • ● 目的:倒木危険性の早期発見

樹木診断調査

  • ● 実施年度:令和元年
  • ● 実施主体:株式会社アーバンフォレストリー
  • ● 内容:樹勢診断、病害虫調査、危険度評価

“遺伝学的調査”

スギの遺伝的多様性調査

  • ● 研究者:木村恵、中村千賀、林部直樹、小山泰弘、津村義彦
  • ● 手法:DNA解析による遺伝的特性の解明
  • ● 成果:日本森林学会誌95巻3号に発表(2013年)
  • ● 重要性:クローン増殖による後継樹育成の科学的根拠

樹高生長調査

  • ● 研究者:小山泰弘、林部直樹
  • ● 期間:近年の継続調査
  • ● 内容:杉並木個体の年間生長量測定
  • ● 成果:長野県植物研究会誌52号に発表(2019年)

“3次元計測・空間解析調査”

3Dビューワー作成

  • ● 実施年度:平成30年
  • ● 実施主体:株式会社wood info
  • ● 技術:レーザー計測による3次元データ化
  • ● 活用:個体管理と変化追跡の基盤データ

UAVレーザー測量

  • ● 実施年度:令和5年
  • ● 実施主体:株式会社STORY
  • ● 範囲:社叢全域
  • ● 精度:高精度等高線図と地形表現図作成
  • ● 用途:遺構把握と詳細な現況記録

点群データ解析

  • ● 実施年度:令和元年
  • ● 技術:3Dスキャナーによる詳細計測
  • ● 成果:ビューア画像による可視化
  • ● 管理:個体別の詳細記録

“動物調査”

鳥類調査

  • ● 実施年度:令和2年
  • ● 期間:1年を通じた継続調査
  • ● 確認種数:27科50種
  • ● 特徴:山地性鳥類種が多数確認
  • ● 比較:天然記念物調査書記載種との照合

“根系調査”

根系分布調査

  • ● 実施年度:令和元年
  • ● 目的:参道整備や補植位置の検討
  • ● 手法:非破壊調査による根系分布把握
  • ● 重要性:史跡保護との両立を図る基礎データ

“利用状況調査”

参拝者動向調査

  • ● 実施年度:令和4年9月
  • ● 実施主体:株式会社BO-GA
  • ● 内容:奥社までの所要時間測定(平均42分)
  • ● 年齢層別の所要時間分析
  • ● トイレ混雑状況調査
  • ● 御朱印待機列状況調査(最大43人、13分待ち)

“空撮調査”

  • ● 実施年度:令和3年
  • ● 実施主体:株式会社wood info
  • ● 目的:全体状況の把握と変化記録
  • ● 活用:管理計画策定の基礎資料

“調査の特徴と意義”

長期継続性

戸隠神社の杜と杉並木を守る会による継続的な市民調査と、専門機関による詳細調査を組み合わせた重層的な調査体制

学際的アプローチ

植物学、森林学、遺伝学、考古学、観光学等の多分野にわたる総合的調査

実用性重視

保全管理に直結する実践的データの蓄積を重視

記録の蓄積

約60haの広大な敷地全体について、その由緒も含めた学術的調査が精力的に行われ、正確な資料が整理されている。

これらの調査により、戸隠神社奥社社叢は「どのような状態で森林が維持され、現在の森林に至っているのかを正確に示す資料」が整備された、国内でも類例の少ない貴重な事例となっています。

Donation
Requests

“ご支援のお願い”

戸隠奥社の杜千年の歴史を支え 千年の歴史を支え 一緒に守り育てる 保全プロジェクトに 支援をお願いいたします

受け継がれてきた聖域を、次世代へ。
神聖な自然と文化を後世に伝える保全事業。
参拝者・地域・企業が一体となった保全活動を目指していきます。

ご寄付のお願い

ご寄付はこちらから